そもそも狭小地の定義とは?
土地活用を考える前に、まずは「狭小地」という言葉がどのような土地を指すのかを確認しておきましょう。
実は、法律などで「何坪以下を狭小地とする」という明確な定義があるわけではありません。一般的には、15坪〜30坪以下の土地や、有効に活用しにくい形の土地を指すことが多いです。
広さのイメージを掴むために、身近なものに例えてみましょう。
※乗用車の駐車スペースは1台あたり約12.5㎡(幅2.5m × 長さ5.0m)として計算しています。
※これらの比較は目安であり、実際の形状や配置によって感じ方は異なります。
このように聞くと非常に小さいと感じるかもしれませんが、都市部では決して珍しくありません。
そして、このような限られたスペースでも、工夫次第で十分に価値を生み出せます。
狭小地でもできる土地活用アイデア10選
ここでは、狭小地だからこそ輝く、具体的な土地活用のアイデアを10種類ご紹介します。ご自身の土地の立地や形状と照らし合わせながら、最適な方法を見つけてください。
単身者向けのアパート・マンション
都市部や駅の近くにある狭小地であれば、ワンルームや1Kといった単身者向けのアパート・マンション経営が有力な選択肢です。
学生や若い社会人からの安定した需要が見込めます。土地の狭さをカバーするため、3階建てや4階建てなど、縦に空間を伸ばす設計が基本です。
デザイン性の高いスタイリッシュな外観にすれば、狭さを感じさせない魅力的な物件に仕上げられます。
戸建て賃貸住宅
意外に思われるかもしれませんが、15坪程度の土地でも、コンパクトな戸建て賃貸住宅を建てることは可能です。
「小さな暮らし」を求める若者夫婦や、プライバシーを重視する層から人気があります。アパートと違い、入居者間の騒音トラブルの心配が少ないのも大きなメリットです。
一度入居が決まれば、ファミリー層と同様に長期間住んでもらえる傾向があり、安定した家賃収入につながります。
小規模店舗
人通りが多い場所や、商店街の一角にある狭小地は、小規模な店舗として活用するのに最適です。
例えば、テイクアウト専門のカフェやコーヒースタンド、個人経営の雑貨店、ネイルサロンなど、省スペースで運営できる業態は数多くあります。
あえて小さな空間を活かした「隠れ家」的な雰囲気を演出することで、大手チェーンにはない独自の魅力を生み出し、固定客を掴むことも可能です。
コインランドリー
単身者向けのアパートが多い住宅街や、学生街にある狭小地であれば、コインランドリー経営も有望です。
自宅に洗濯機を置くスペースがない人や、布団など大きなものを洗いたいという需要は根強くあります。一度機器を設置すれば、基本的に無人で運営できるため、管理の手間が少ないのが魅力です。
最近では、カフェを併設したお洒落なコインランドリーも登場しており、差別化を図ることで収益性を高められます。
シェアハウス
戸建て賃貸住宅をさらに収益性の高い形にしたのが、シェアハウスです。各部屋を複数の入居者に貸し出すことで、一戸の家として貸すよりも高い家賃収入を得られる可能性があります。
大学の近くや、外国人が多く住むエリアで特に需要が高いです。
ただし、共用部分の管理や、入居者間のルール作りなど、通常の賃貸経営とは異なる運営ノウハウが必要となります。
駐車場・駐輪場
初期投資をできるだけ抑えたい場合に、まず検討したいのが駐車場や駐輪場の経営です。土地を舗装し、区画線を引くだけで始められる手軽さが最大のメリットです。
駅や商業施設、オフィス街の周辺はもちろん、住宅街でも月極駐車場の需要はあります。
1台や2台分のスペースしか確保できなくても、隣に自動販売機を設置すれば、追加の収入源を確保できます。
コワーキングスペース
リモートワークの普及により、自宅以外のワークスペースを求める需要が高まっています。
特に、住宅街にある狭小地であれば「自宅の近くで集中して仕事ができる場所」として、地域住民向けの小規模なコワーキングスペースの需要が見込まれます。
デスクや椅子、Wi-Fi環境、電源といった初期投資は必要ですが、月額会員制にすれば安定した収益が期待できるでしょう。
レンタルスペース
時間単位で場所を貸し出すレンタルスペースも、狭小地と相性の良い活用法です。
例えば、小規模な会議やセミナー、友人同士のパーティー、動画や写真の撮影スタジオ、個人の趣味の教室など、使い方はさまざまです。
特定の用途に絞らず、多目的に貸し出すことで、幅広い層からの利用が期待できます。予約管理や清掃の手間はかかりますが、Webサイトで手軽に集客できるのが強みです。
トランクルーム
都市部では、住宅の収納スペース不足に悩む人が多く、トランクルームの需要が伸びています。屋外にコンテナを設置するタイプであれば、比較的少ない初期投資で始めることが可能です。
建物を建てて、屋内型トランクルームとして貸し出せば、より高いセキュリティを求める利用者のニーズに応えられ、収益性も高まります。
景気の変動を受けにくく、安定した経営が期待できるビジネスです。
土地を貸し出す
自分で事業を始めるのが不安な場合は、土地そのものを事業者に貸し出すという選択肢もあります。
これは、最もリスクの低い活用方法です。
例えば、駐車場経営をしたい会社に土地を貸して地代を得たり、コンビニエンスストアの事業者から土地を貸してほしいと声がかかったりするケースです。
収益は少なくなりますが、管理の手間や初期投資が一切かからず、毎月安定した収入を確実に得られます。
狭小地で土地活用する3つのメリット
「狭い」デメリットばかりが目につきがちな狭小地ですが、土地活用を行う上では、むしろメリットとなる点もあります。
固定資産税や相続税対策になる
土地は所有しているだけで、毎年固定資産税がかかります。
しかし、その土地の上にアパートや戸建て賃貸などの住宅を建てると「住宅用地の特例」が適用され、土地の固定資産税を最大で6分の1に軽減可能です。
また、将来の相続時には、賃貸住宅の敷地は「貸家建付地」として評価額が下がり、さらに「小規模宅地等の特例」が適用できれば、相続税の負担を大幅に減らす効果も期待できます。
具体的には、「貸付事業用の宅地等」に該当する宅地は、200㎡までの限度面積で最大50%まで相続税が減額されます。
【出典】国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
一般的な広さの土地と比べて初期費用が安くなる可能性がある
土地の面積が小さい分、土地の購入費用や造成費用、そして上に建てる建物の建築費用といった初期投資の総額を抑えられます。
もちろん、坪単価で見た建築費は割高になることもありますが、事業を始めるためのハードルが低いのは大きなメリットです。
少ない自己資金で始められたり、金融機関からの借入額を減らせたりすることで、リスクを抑えた土地活用が可能になります。
地域貢献につながる
管理されずに放置された狭小地は、雑草が生い茂ったり、ゴミが不法投棄されたりして、地域の景観や治安を悪化させる原因になりかねません。
その土地を有効活用し、例えば自動販売機を置いて人々の喉を潤したり、美しいデザインの戸建て賃貸を建てて街並みを良くしたりすることは、立派な地域貢献です。
地域に必要とされる場を提供できれば、所有者としての満足感も得られるでしょう。
狭小地で土地活用する3つのデメリット
メリットがある一方で、狭小地ならではの難しさや注意点も存在します。事前にデメリットを理解し、対策を考えることが成功の鍵です。
活用方法が限定される
当然のことながら、土地の面積が小さい分、選択できる活用方法は限られます。大規模なマンションや商業施設、工場などを建てることはできません。
駐車場にするにしても、停められる台数が限られるため、大きな収益は見込みにくいでしょう。
その土地の広さや形状の中で、いかに収益性を最大化できるか、知恵を絞る必要があります。
建物を建てる場合は建築コストが増える可能性がある
狭小地に建物を建てる場合、建築費が割高になる傾向があります。その理由は、重機や資材を置くスペースが限られるため、作業効率が落ちたり、特殊な工法が必要になったりするためです。
狭さをカバーするために縦に長く建てる場合は、階数が増えることで構造計算や耐火性能など、法律で求められる基準が厳しくなるため、建築コストが上昇する要因となります。
活用方法によっては収益性が低くなる
狭小地の土地活用は、事業規模が小さくなるため、得られる収益も少なくなります。
例えば、駐車場経営は手軽に始められますが、2台分のスペースしか確保できなければ、得られる収入はごくわずかです。
初期投資や維持管理費を考えると、ほとんど利益が残らない可能性もあります。少ない面積でいかに高い収益を上げるか、「収益効率」を強く意識した活用方法を選ぶ必要があります。
狭小地の土地活用で失敗しないための4つのコツ
狭小地の土地活用を成功させるためには、いくつか押さえておくべきコツが存在します。失敗しないためにも、参考にしてください。
立地や地域のニーズを把握する
土地活用を成功させる上で最も重要なのが、その土地が持つポテンシャルと、地域のニーズを正確に把握することです。
いくら立派な建物を建てても、そこに需要がなければ意味がありません。
「駅が近いから単身者向けアパートが良さそうだ」「学生街だからコインランドリーの需要があるかもしれない」といった仮説を立て、実際に街を歩いてみたり、周辺の競合施設の状況を調査したりすることが不可欠です。
用途地域や法規制を必ず確認する
土地活用には、建築基準法や都市計画法といった法律が密接に関わってきます。
特に、狭小地では以下の規制に注意が必要です。
用途地域:その土地にどのような種類の建物を建てられるかを定めたルール |
建ぺい率・容積率:敷地面積に対して、どのくらいの大きさの建物を建てられるかを定めたルール |
接道義務:敷地が道路に2m以上接している必要があるというルール |
各種制限:建物の高さや、隣地との境界線からの距離など、さまざまな規制があります |
これらの法規制を事前に確認せずに計画を進めると、そもそも建物を建てられない、といった事態になりかねません。
収支計画を念入りに立てる
土地活用を始める前に、必ず詳細な収支計画を立てましょう。「これくらいの家賃収入が見込めるはず」といった希望的観測だけで事業を始めるのは非常に危険です。
建築費用などの初期投資はもちろん、固定資産税や修繕費、ローンの返済、管理会社への委託費用といった、継続的にかかる費用(ランニングコスト)をすべて洗い出しましょう。
そのうえで、空室が発生するリスクも考慮に入れ、現実的な家賃収入を想定し、長期的に安定した経営が可能かどうかを厳密にシミュレーションすることが重要です。
土地活用の専門家に相談する
狭小地の土地活用は、法規制が複雑であったり、特殊な建築ノウハウが必要であったりと、専門的な知識が不可欠です。一人で悩まず、早い段階で土地活用の専門家に相談することをおすすめします。
経験豊富な専門家であれば、その土地の可能性を最大限に引き出すための最適な活用方法を提案してくれます。
また、複雑な法規制のチェックや、現実的な収支計画の立案、資金調達の相談まで、事業の成功に向けて心強いパートナーとなってくれるでしょう。
まとめ|狭小地の土地活用については専門家にご相談ください
この記事では、狭小地を有効活用するための具体的なアイデアや、成功のためのメリット・デメリット、そして注意すべき点について詳しく解説しました。
狭小地は、確かに扱いが難しい側面もありますが、決して「使えない土地」ではありません。その土地が持つ個性と地域のニーズを的確に結びつけ、正しい知識を持って計画を進めれば、安定した収益を生み出す「第二の収益源」に生まれ変わる可能性を秘めています。
「自分の土地には、どんな活用方法が合っているんだろう?」
「具体的な建築プランや、収支計画について相談したい」
もしこのようにお考えでしたら、一度土地活用の専門家に相談することをおすすめします。
土地活用の専門家であれば、狭小地についても取り扱っている場合があるため、ご自身の土地にあった最適な活用方法の提案や事業計画の作成、事業者とのマッチングまでトータルでサポートしてくれます。
狭小地の特徴について理解を深め、価値ある資産として有効活用していきましょう。