相続した実家の土地を放置する4つのリスク
相続した実家の土地について「いずれ考えよう」と先延ばしにしている方も少なくありません。
しかし、活用せずに放置し続けると、金銭的な負担やトラブルにつながる、さまざまなリスクが潜んでいます。
具体的には以下の4つのリスクが考えられます。
◯特定空家に指定される可能性がある
◯固定資産税がかかる
◯定期的な管理などの手間やコストがかかる
◯近隣トラブルのもとになる
それぞれのリスクについて詳しく解説します。
特定空家に指定される可能性がある
実家の土地に古い建物が残っている場合、最も注意したいのが「特定空家」に指定されるリスクです。
「特定空家」とは、そのまま放置すれば倒壊の危険があったり、衛生上・景観上で有害となったりするなど、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすと判断された空き家を指します。
市町村による調査の結果、特定空家に指定されると、行政から建物の修繕や撤去を求める助言・指導、さらには勧告・命令が出されることがあります。
もし命令に従わない場合、最大50万円以下の過料が科されるほか、最終的には行政代執行によって強制的に解体され、その費用が所有者に請求されるのです。
【出典】政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」
固定資産税がかかる
土地や建物は、たとえ利用していなくても「資産」として扱われるため、所有しているだけで毎年「固定資産税」や「都市計画税」が課税されます。
ただし、安直に建物を取り壊して更地にしてしまうと「住宅用地の特例」が適用されなくなり、土地の固定資産税が最大で6倍に跳ね上がるため、注意が必要です。
ですが、放置している期間が長くなるほど、税金の負担は雪だるま式に増えていくため、土地を別の方法で活用したり、売却したりするなど、なんらかの対策が必要となります。
定期的な管理などの手間やコストがかかる
遠方に住んでいる場合でも、相続した実家の土地の管理責任は所有者にあります。
少なくとも年に数回は現地を訪れ、建物の換気や庭の草むしり、破損箇所の確認など、定期的なメンテナンスが欠かせません。
もし自分で行けない場合は、管理を代行するサービスに依頼する方法もありますが、当然ながら費用が発生します。
実家の土地を放置することは、目に見えない手間とコストがかかり続ける状態なのです。
近隣トラブルのもとになる
管理が行き届かない土地や空き家は、さまざまな近隣トラブルの原因となります。
例えば、伸び放題の雑草や庭木が隣の敷地にはみ出したり、害虫が発生して周辺に被害を与えたりするケースです。
また、建物の老朽化が進めば、台風や地震の際に屋根や外壁が飛散・倒壊し、近隣の家屋や通行人に危害を加えてしまう甚大な事故につながる恐れもあります。
万が一、所有する建物が原因で他者に損害を与えた場合、その責任は所有者が負わなければなりません。
実家の土地はどうするのが正解?7つの対策について解説
実家の土地を放置するリスクを避けるためには、できるだけ早く対策を検討することが重要です。
実家の土地をどうするのか、主に以下の7つの対策が考えられます。
◯建物がある場合は家族で住めないか検討する
◯新たに家を建てて住む
◯土地を貸し出す
◯土地活用を行う
◯土地を売却する
◯相続前であれば相続放棄も検討
◯相続土地国庫帰属制度を活用する
ご自身の家庭の事情や土地の条件に合わせて、最適な方法を探ってみましょう。
建物がある場合は家族で住めないか検討する
実家にまだ住める状態の建物が残っている場合、最もシンプルな対策として「相続した家族の誰かが住む」ことが挙げられます。
リフォームやリノベーションを施して、現代のライフスタイルに合わせた快適な住まいに生まれ変わらせるのもよいでしょう。
親が大切にしてきた家を、自分たちの手で受け継いでいくことは、何よりの供養にもなります。
新たに家を建てて住む
建物の老朽化が激しい場合や、より自由に設計したい場合は、既存の家を解体し、新しく自宅を建てて住むという選択肢もあります。
土地を新たに購入する必要がないため、建築費用だけでマイホームを手に入れられるのが大きなメリットです。
二世帯住宅を建てて、家族と一緒に暮らすという選択も考えられます。
土地を貸し出す
自分で住む予定がない場合は、土地を第三者に貸し出して地代を得る方法もあります。
「事業用定期借地権」などの契約を結べば、土地の所有権は維持したまま、長期的に安定した収入を得られます。
建物の建設や運営は借主が行うため、地主は初期投資や管理の手間をかける必要がありません。
大切な土地を手放したくない場合に有効な手段です。
土地活用を行う
土地を単に貸すだけでなく、より積極的に収益を追求したい場合は、土地活用を検討しましょう。アパートや駐車場、高齢者向け施設などを経営すれば、地代収入よりも大きな収益が期待できます。
土地の立地や広さ、周辺のニーズによって最適な活用方法は異なるため、専門家のアドバイスを受けながら、その土地のポテンシャルを最大限に引き出す方法を探るのが成功の鍵です。
土地を売却する
今後、実家の土地を利用する予定が全くなく、管理の負担からも解放されたい場合は、売却するのも現実的な選択肢です。
土地を売却すれば、まとまった現金が手に入るだけでなく、固定資産税の支払いや管理の手間から完全に解放されます。
ただし、土地の立地によってはすぐ買い手が見つからない場合もあるため注意しましょう。
相続前であれば相続放棄も検討
まだ親が存命で相続が発生していない、あるいは相続発生直後(相続開始を知ってから3ヶ月以内)であれば、「相続放棄」という選択肢もあります。
これは、プラスの資産もマイナスの負債も、一切の遺産を引き継がないという手続きです。
ただし、実家の土地だけでなく、預貯金などの他の全ての資産も相続できなくなるため、慎重な判断が求められます。
相続土地国庫帰属制度を活用する
相続したものの、買い手が見つからず、活用も難しい土地については「相続土地国庫帰属制度」の利用も考えられます。
これは、一定の要件を満たす土地を、国に引き取ってもらう制度です。
審査手数料や、10年分の土地管理費相当額の負担金が必要となりますが、どうしても手放したい土地がある場合には有効な手段です。
【出典】政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」」
実家の土地を活用する5つのアイデア
実家の土地を「活用する」と決めた場合、どのように土地活用すればいいのかわからない方もいるでしょう。
土地活用で代表的な方法は以下の5つです。
◯アパート・マンション経営
◯戸建て賃貸住宅経営
◯駐車場経営
◯貸し店舗やテナントオフィス経営
◯高齢者向け施設経営
それぞれのアイデアについて詳しく解説します。
アパート・マンション経営
実家の土地が住宅街や駅の近くなど、賃貸需要が見込める場所にあれば、アパートやマンションの経営が有力な選択肢となります。
長期的に安定した家賃収入が期待でき、節税効果も高いのが魅力です。
単身者や学生、ファミリー層など、その地域の人口構成に合わせた間取りを考えることが成功の鍵となるでしょう。
もし、実家の建物が比較的新しく、構造がしっかりしている場合は、大規模なリフォームを行って賃貸物件として再生する方法もあります。
また、入居者の募集や家賃の集金、クレーム対応などは、管理会社に委託すると運営の手間を減らせます。
戸建て賃貸住宅経営
実家の建物を活かす方法として、戸建て賃貸住宅として貸し出すのもおすすめです。
特にファミリー層からは、アパートやマンションにはない、庭付きの戸建て住宅への根強い人気があります。
一度入居が決まると、アパートなどと比べて長期間住んでもらえる傾向があり、より安定した経営が期待できます。
建物が古い場合でも、内装を中心にリフォームすれば、建築コストを大幅に抑えながら賃貸経営を始めることが可能です。
将来的に、賃貸をやめてその土地と建物を売却する、あるいは自分たちが住むといった柔軟な選択もできます。
駐車場経営
実家の建物が老朽化しており再利用が難しく更地にする場合、最も手軽に始められるのが駐車場経営です。土地を舗装し、区画線を引くだけで事業を開始でき、初期費用を低く抑えられます。
狭い土地や形のいびつな土地でも対応しやすく、将来、他の用途へ転用しやすいのもメリットです。
周辺のニーズによって、月極駐車場かコインパーキングどちらを経営するのか判断します。
月極駐車場は毎月の収入が安定する一方、コインパーキングは商業施設の近くなど、短期利用が多い場所で高い収益を上げられる可能性があります。
専門業者に土地を貸して運営を任せれば、管理の手間をかけずに地代収入を得ること可能です。
貸し店舗やテナントオフィス経営
実家の土地が幹線道路沿いや商店街の近くなど、人通りの多い場所にある場合は、店舗やオフィスとして貸し出す方法も考えられます。
建物を改修してカフェや雑貨店、美容室などのテナントを誘致したり、近年需要が高まっているコワーキングスペースとして活用したりする事例も増えています。
事業者に貸し出す場合は、一般的に長期の契約となるため、安定した賃料収入が見込めるでしょう。
ただし、一度退去されてしまうと、次のテナントがすぐに見つかるとは限らないため、地域に根差した需要のある業種を見極めることが重要です。
立地のポテンシャルを活かせば、高い収益も期待できます。
高齢者向け施設経営
実家が郊外や地方にある場合でも、その地域が高齢化しているなら、高齢者向け施設の経営は有効な選択肢です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やデイサービス、グループホームなどは、広い敷地や駐車場が必要となるため、郊外の土地に適しています。
これらの施設は、一度入居者や利用者が集まれば、長期にわたって安定した運営が見込めるため、地主にとっても安心感の高い活用方法です。
自分で施設を建築して事業者に貸し出す方法と、土地だけを事業者に貸し出す方法があり、社会貢献にもつながる安定した土地活用です。
運営は介護・福祉の専門知識をもつ事業者に任せるため、土地の所有者は経営に直接関わることなく、安定収入を得られます。
実家の土地活用をどうするべきかお悩みの方は専門家へご相談ください!
今回の記事では、相続した実家の土地を放置するリスクや、具体的な対策について解説しました。住む、貸す、活用するなど、選択肢は多岐にわたります。
最適な方法は、ご自身の状況や土地の条件によって異なるため、一つとして同じ答えはありません。
大切なのは、問題を先延ばしにせず、ご自身にとって最善の道は何かを考えることです。
もし判断に迷う場合は、土地活用の専門家に相談し、客観的なアドバイスを受けることから始めてみてはいかがでしょうか?