独立して介護施設を開業したい場合、以下の7ステップを行う必要があります。
1介護施設の種類の決定
2事業計画の立案
3資金調達
4法人格の取得
5事務所・職員の手配
6指定前研修
7指定申請
この記事では、7つのステップの概要や、独立に必要な資金の調達方法などを解説します。また、介護施設の種類や資格、独立する際のポイントなども紹介します。
独立に興味がある、独立を実際に検討しているといった人が、何から始めれば良いのかを理解できる記事となっているため、ぜひ参考にしてください。
介護事業での独立に向けて法人形態を理解しよう
介護事業で独立するには、法人を設立しなければならないため、どのような法人形態があるのか理解しましょう。個人事業主やフリーランスでは介護施設の経営はできないため注意してください。
主な法人の形態としては、社団法人の社会福祉法人・医療法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、株式会社や合同会社などがあげられます。
社会福祉法人であれば税制面での優遇があり、NPO法人であれば資本金が不要、株式会社は社会的認知度の高さから資金調達をしやすいといったメリットがあります。それぞれの特徴を理解しておけば、独立する際にも役立つでしょう。
介護事業に欠かせない指定申請
介護事業を始めるにあたっては、国から介護事業者として指定されなければなりません。これを指定申請といいます。指定を受けるためには、法人であることに加え、人員基準や設備基準、運営基準を満たしていなければならないため、場合によっては独立準備に時間がかかる可能性もあるでしょう。
指定申請は自治体に対して行うものです。申請時に提出する書類は、介護施設の種類や提出先の自治体によって異なるため、詳しくは各自治体に確認してください。
介護事業で独立するまでの7ステップ
介護事業で独立するまでには、大きく分けて以下の7ステップがあります。
1運営する介護施設の種類の決定
2事業計画の立案
3資金調達
4法人格の取得
5事務所の契約締結および人材採用
6指定前研修の受講
7指定申請
ここでは各ステップの概要について解説します。介護事業での独立を検討しているものの、何から始めればいいのかわからない、といった方向けの内容です。ぜひ参考にしてください。
1.運営する介護施設の種類の決定
介護施設といってもその種類はさまざまであるため、まずはどの施設を運営するのか決めなければなりません。
自分の興味・関心やこれまでの経験を生かせるかといった点に加えて、サービスを提供するエリアにどのような介護施設があるのかチェックしましょう。その際、介護付き有料老人ホームは既にあるからやめたほうがいいのか、それとも需要が供給を上回っているから後発でもチャンスがあるのかといった視点を持つことが大切です。
2.事業計画の立案
介護施設の種類が決まったら事業計画を立てます。事業計画は、この後のステップである資金調達する際に、金融機関などに提出するケースもあるため、入念に作り込みましょう。
事業計画には特定のフォーマットはありませんが、一般的には、創業の動機・目的、経営者の職歴や事業の実績、具体的に提供するサービス、従業員、資金計画(必要な資金や調達方法)、事業の見通しなどを記載します。
3.資金調達
介護施設を建てるには高額な費用がかかるため、資金調達は必須です。施設の種類によって必要な費用の目安は異なり、数百万円程度のケースもあれば、1,000万円以上かかるケースもあります。
特に利用者が入所・通所する施設は、必要なスペースや設備も多くなるため、高額になるでしょう。資金は、個人資金を活用するほか、金融機関からの融資、補助金などで調達できます。
4.法人格の取得
介護事業をはじめるにあたっては、法人格を取得していなければなりません。法人の種類は大きく分けて、非営利法人と営利法人があります。法人格の種類によって必要な費用や取得にかかる時間などが異なるため、自分はどの法人格を取得するのかしっかりと検討しましょう。
5.事務所の契約締結および人材採用
法人格を取得したら、次は介護施設および事務所を手配しなければなりません。
入所・通所型の場合、利用者用のスペースや厨房、食堂、トイレ、浴室など、必要に応じた設備を導入する必要があるため、事前に何が必要か確認しておきましょう。また、訪問介護など、非入所・通所型の場合、事務所の手配のみで済むため、空きテナントなども活用できます。
介護事業所には、サービスによって人員配置基準が設けられているため、必要な人材採用も進めなければなりません。
6.指定前研修の受講
介護事業で独立する場合、指定申請が必須ですが、その前に管理者を対象とした指定前研修を受講しなければなりません。指定前研修では、事業に関係する法令や規則に関する基本的な情報や指定申請書作成時の注意点などについて説明されます。
指定前研修は、法人の代表者や介護施設の管理者となる人が受講するケースが一般的です。研修は各自治体で月に1回のペースで行われているため、詳しいスケジュールは、独立を予定しているエリアの自治体で確認してください。
7.指定申請
指定前研修を受講したうえで、指定申請をします。必要な書類を準備して、独立を予定している地域を管轄する事態に書類を提出してください。
指定申請は予約制となっており、指定前研修を受けた月の月末までに行う必要があるため、時間に余裕を持って準備を進めましょう。
書類に不備があると不受理となり、開業日が遅れる可能性があるため、書類に抜け漏れがないか事前にしっかりとチェックしてください。
主な介護施設の種類
介護施設にはいくつかの種類があるため、それぞれどのような施設なのかを理解しましょう。主な種類とその概要は以下の通りです。
介護施設の種類 | サービスの概要 |
居宅介護支援 | 利用者ができる限り自宅で自立した生活ができるように支援する |
通所介護(デイサービス) | 自宅から介護施設に通ってサービスを受ける |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 認知症の利用者を対象に専門的なケアを提供する |
訪問介護 | 利用者の自宅にホームヘルパーが出向いて介助を行う |
通所リハビリテーション(デイケア) | 利用者は自宅から施設へと通い、日常生活を遅れるように必要なリハビリを提供する |
このように、介護施設の種類はさまざまであるため、サービス内容等を考慮してどの形態で独立するか決める必要があります。
介護施設で独立に役立つ資格・職種
ここでは介護施設で活躍してくれる職種や持っていると役立つ資格などを紹介します。有資格者や専門職がいると、提供するサービスの質が高まります。また、介護施設によっては、特定の有資格者、職種の手配が必須となっているケースもあるため、ぜひ参考にしてください。
ケママネジャー
介護支援専門員とも呼ばれるケアマネジャーは、ケアプランの作成や事業者との連絡調整などを行う専門職です。
利用者の心身の状況や家族からの要望を踏まえたうえで最適なケアプランを作成します。介護施設に所属して働く人もいますが、個人で独立して仕事を受ける人もいます。
ケアマネジャーになるには、一定の実務経験を積んだうえで介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、さらに実務研修を修了しなければなりません。
サービス提供責任者
訪問介護において、介護計画書を作成し、利用者が適切なサービスを受けられるように支援を行う職種です。
訪問介護サービスの申し込み希望者への対応や利用者とその家族との面談なども行います。
サービス提供責任者になるには、介護福祉士を取得している、もしくは介護福祉実務者研修を修了していなければなりません。
ヘルパー
ヘルパーとは、利用者の自宅を訪れて身の回りの世話や食事や排せつの支援などを行う職種です。
利用者の状況やニーズに応じてサービスを提供するため、事業所によっては、24時間体制でヘルパーがサービスを提供するケースもあります。
ヘルパーになるには、介護職員初任者研修、介護職員実務者研修、生活援助従事者研修のいずれかを修了している、もしくは介護福祉士の資格を取得していなければなりません。
生活相談員
生活相談員は、介護施設とその利用者・家族、ケアマネジャーとの連絡や調整を担当する職種です。
施設に所属して働くケースが一般的で、利用者獲得にむけた営業や問い合わせ対応をするケースもあります。
生活相談員になるには、社会福祉士または精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格のうちいずれかが必要ですが、自治体によっては必要な資格の条件が異なるケースもあります。
介護福祉士
介護福祉士は、介護に関する国家資格の1つです。利用者の生活支援や介助を行うほか、医療関係者との連携も求められるなど、非常に重要な役割を担います。
介護福祉士は、訪問介護や特別養護老人ホーム、社会福祉施設など、さまざまな介護施設で求められる資格です。
介護福祉士になるには実務経験を通して取得するルート、養成施設で勉強して取得するルート、福祉系の高校を卒業して取得するルート、経済連携協定によるルートなどがあります。いずれの場合も、筆記試験は必須ですが、実技試験に関してはルートによって免除されます。
社会福祉士
社会福祉士は障がいを持っているなど、福祉サービスを必要としている方からの相談を受け、助言や指導を行う福祉の専門家です。社会福祉士も国家資格です。
介護施設の場合、社会福祉士が利用希望者やその家族から相談を受け、実態調査や契約などを担当します。また、入所後の生活に関する助言を行うケースもあります。
社会福祉士の受験資格を得るには、いくつかのパターンがありますが、大まかな流れとしては、福祉系の大学や短大などを卒業し、実務経験を積んだうえで養成施設を修了しなければなりません。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神障がいを抱えている人の相談に応じるほか、各種社会支援を行う精神保健福祉分野の専門家です。
社会福祉士、介護福祉士と並んで福祉分野における三大国家資格の1つです。勤務先は、介護施設や福祉施設、医療機関など多岐にわたります。
社会福祉士同様、精神保健福祉士の受験資格を得るには、学校を卒業し、実務経験を積んだうえで養成施設を終了する必要があります。ただし、社会福祉士登録者や一定以上の実務ケースがある場合は、そのまま養成施設に入れます。
介護事業で独立するためのポイント
介護事業で独立するにあたっては、どのようにして人材を獲得するか、資金調達をどうするか、などいくつかのポイントをおさえることが大切です。ここでは、独立に向けてのポイントを紹介します。スムーズに独立するためにも重要なポイントであるため、ぜひ参考にしてください。
人材の採用
介護サービスを提供するには、人材が必要不可欠であるため、いかにして人材を採用するかは独立にあたって非常に重要なポイントです。
介護=激務というイメージを持っている人が多いことに加え、飲食業など人手不足に悩む業界も多いため、採用にあたってはこれらのハードルをクリアしなければなりません。
給与や賞与、休暇日数、時短勤務の有無など、求職者が求める情報の提供は採用活動において重要です。また、必要に応じて高齢者や介護や育児などで仕事のブランクのある人の採用も検討してみてください。
資金の調達
介護施設を用意するには高額な資金が必要なため、どのようにして資金を調達するかを検討しなければなりません。自己資金のみでは支払いきれない可能性が高いため、どういった資金調達方法があるのか理解し、自分にあった方法を選ぶ必要があります。
資金の調達方法
主な資金の調達方法には、以下のようなものがあります。
・個人調達
・融資
・補助金
・出資
個人調達は個人の資産を活用する方法です。また、親族や友人・知人から借り入れるケースもあります。融資は、銀行や信用金庫などの金融機関からお金を借り入れる方法です。資金調達の中でも一般的な方法だといえます。
また、株式を譲渡して他の企業から出資してもらう方法もあります。ただし、譲渡比率が過半数を占めると、譲渡した相手に経営権が移るため注意が必要です。
そのほかにも、国や各自治体では、補助金や助成金を支給しているケースもあるため、チェックしてみてください。
地域ニーズの理解
独立しようとしている地域で、どういった介護のニーズがあるのかリサーチしましょう。
その地域にはどのくらいの人がいて、介護を必要としている人がどのくらいいそうなのか、またどういった介護施設がすでにあるのかといった情報は独立にあたって必要不可欠です。介護施設の数が多くても「サービス付き高齢者向け住宅はまだないからチャンスがある」となる可能性もあります。
リサーチが不十分だと、ニーズに合致したサービスを提供できず、思ったように利益を上げられない恐れもあるため注意してください。
まとめ
独立して介護施設を開業するには、施設の種類の決定や事業計画書の立案、資金調達、人材採用、各種申請手続きなどやるべきことがたくさんあります。また、競合との差別化を図るためにも、独立予定のエリアの入念なリサーチは欠かせません。
施設の種類によって、必要な人員や資格も異なるため、まずはどういった介護施設で独立するのか、そのためにはどういった条件をクリアする必要があるのかの把握に努めましょう。
独立までにやるべきことはたくさんあるため、専門家の力を借りることも1つの選択肢です。タカオでは福祉施設の新規開設には、不動産(土地)取得から施設建築等のハード面と、資金調達や行政機関への指定申請、スタッフ募集等のソフト面の両面での準備が不可欠です。
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