介護施設の運営を検討しており、実際の建設費用が気になる方もいるのではないでしょうか。
介護施設の建設には、建物の費用をはじめとして多くの資金が必要になります。
本記事では、介護施設建設にかかる費用を詳しく解説していきます。介護施設建設に関しての理解が深まる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
介護施設をつくるには多額の費用がかかる
介護施設の建設には多くの費用が必要です。主な費用は施設の建設費ですが、その他にも介護施設の開業までには、細かな費用が存在しています。
介護施設をつくるためにかかる主な費用は次の2つです。
- 建物の建築費
- 設備、備品購入費
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
建物の建築費
特に大きな割合を占めるのが建物の建築費用です。
介護施設を建設するにあたっては「設備基準」と呼ばれる、国が定めた要件を満たす必要があります。
居室における必要な面積の基準をはじめ、火災予防のための設備や食堂、浴室、洗面設備など各エリアで必要な基準を満たさなければ、介護施設を開業することができません。
建設費は最低でも数千万円以上は見込んでおく必要があるでしょう。
設備、備品購入費
施設建設費の他にも、入居者が使用するベッドや職員が待機する部屋で使用するテーブルやイス、事務用品など多くの備品の購入が必要です。
要介護者を受け入れる施設の場合、入浴設備をはじめ、専用の設備の導入も必須となります。
場合によっては、事故を防ぐ目的や命を守るために身体拘束用備品など特殊備品の導入が必要になるケースも存在します。
施設によっても必要となる備品は異なるため、介護施設の建設や開業を検討した際には、施設ごとの特徴を押さえ、必要な備品の洗い出しを行いましょう。
物価高により介護施設の建設費用は値上がり傾向
ロシア・ウクライナ情勢の悪化によって建築資材の不足が世界的な課題となり、建築資材の価格は大きく値上がりした状態が続いています。
介護業界においても、資材値上がりの影響は大きく、全体的な建設費は増加傾向にあります。
建築費用が値上がりするもう1つの要因は、石油価格の上昇です。
石油価格は石油製品の値段上昇や施設に配備する物品の配送費用に跳ね返るため、石油価格の上昇に合わせ、介護施設の建築費用も増加している状況にあります。
知っておくべき介護施設の種類
一言で介護施設といっても、提供するサービスによってさまざまな種類があります。各施設における特徴を押さえ、開業を行う際の参考としましょう。
民間施設と公的施設に分けて各施設で提供可能なサービスを紹介します。
民間施設
まずは民間施設から紹介していきます。
介護付き有料老人ホーム
介護スタッフが24時間常駐しており、食事や入浴といった日常生活における介護サービスの提供に加えて、レクリエーションなど入居者が楽しめる行事などが充実した施設です。介護度が軽い方から重い方まで幅広く利用が可能です。
住宅型有料老人ホーム
主に自立した方や要支援、要介護度が低い高齢者の方を対象とした施設となります。
介護が必要な場合は外部のサービスを利用し、その分の料金を別で支払う形になるため、入居者一人ひとりが自身に合ったサービスを選択できる点も特徴と言えます。
サービス付き高齢者住宅
高齢者が自立した生活が行えるよう、生活に関する相談や安否の確認などのサポートが受けられる高齢者向けの住宅を指します。
大きく「一般型」と「介護型」に分かれており「介護型」は要介護度が重い方でも入居が可能です。
グループホーム
認知症の高齢者が共同生活を送るための施設です。
利用者は専門のスタッフの支援を受けながら、5~9人ほどのグループをつくって、自立した生活を目指します。入居者自身が家事などを行うため、より家庭的な環境で日々を過ごせることが特徴です。
公的施設
続いて公的施設も同様に紹介していきます。
ケアハウス
ケアハウスでは家庭での生活が難しくなった60歳以上の人が、低料金で食事や洗濯などの介護サービスを受けることができます。
社会福祉法人や地方自治体、民間事業者などによって運営される福祉施設のため、民間の介護施設よりも入居費用が安価な点が特徴です。
特別養護老人ホーム
24時間介護サービスを提供する施設で、認知症の方も入居可能です。介護度の高い方が入居することが多く「看取り」のサービスも受けることができます。
介護老人保健施設
介護が必要な高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を支援する施設です。
医師による医学的管理の下、看護や介護などのケアの他にもリハビリテーションや栄養管理などの日常サービスも提供している点が特徴です。
介護医療院
要介護者の長期療養や生活支援を行います。
医師の配置が義務付けられていることから、他の施設では受け入れが難しい医療対応が必要な要介護者の受け入れが可能です。
介護施設を作るうえで注意すべきポイント
ここからは実際にどのような点に注意して介護施設の建設を行っていけばよいかを解説していきます。
代表的なポイントは以下の3点です。
- 設備指定をクリアする必要がある
- 入居者、スタッフ双方が快適に過ごせる設計が必要
- 施設の種類によって基準面積が異なる
それぞれの項目について、詳しく紹介していきます。
設備指定をクリアする必要がある
介護施設を運営するには、建設時に「設備基準」をクリアした建物を準備しなければいけません。
設備基準は施設ごとに異なるため、施設設計時には開業する介護施設の業態を決定し、設備基準のチェックリストなどの制作をしておくことが望ましいでしょう。
入居者、スタッフ双方が快適に過ごせる設計が必要
介護施設においては、入居者が快適に過ごせる環境づくりが不可欠です。施設の導線やレイアウト、どのような備品を購入するかなど細かなところに気を配り、施設全体の快適性を高める工夫を行いましょう。
合わせて、スタッフの労働環境にも重点をおくことが大切です。スタッフの労働環境やモチベーションは、施設全体のサービスの質に直結してくるため、スタッフが気持ちよく働ける環境づくりを心がけましょう。
施設の種類によって基準面積が異なる
介護施設の建設においては、居室における入居者1人あたりの面積に決まりがあります。
また、施設の種類や共用部の有無などによって基準面積は変化するため、設備基準と同様に設計時点での確認が必須となります。土地の面積と開業を行う業態の基準面積によって、受け入れが可能な人数を把握することが可能です。
収益をあげるためには受け入れ可能な人数は重要な指標となるため、基準面積は事前に必ず把握しておくべきです。
介護施設の経営には資格は不要
介護施設の運営においては、各ポジションに有資格者の設置が求められる一方で、経営者や運営者は資格や免許の取得は特に必要ありません。
ただし介護福祉経営士といった資格を取得することで、介護施設の経営に必要な知識をインプットできるため、取得しておいて損はないでしょう。
介護施設を建設するための資金調達方法
介護施設を開業する場合は多額の費用が発生します。
そのため、自己資金だけで開業が難しいという方も少なくありません。資金の問題により開業が難しい場合には、開業資金を外部から調達するという方法もあります。
ここからは代表的な資金調達の方法について解説していきます。
- 融資
- 補助金や助成金
- ファクタリング
それぞれの特徴を理解して、事業開始時にうまく活用しましょう。
融資
資金調達の最も代表的な方法は、日本政策金融公庫や銀行からの融資です。
融資を受ける際は、自己資金の有無が審査において重要となってきます。自己資金の大小によって審査を通過するかどうかや、融資の金額が決まります。
そのため、融資を前提に介護施設の開業を検討している場合には、始めにまとまった自己資金を用意しましょう。
補助金や助成金の活用
融資を受ける以外に、国や自治体が提供している補助金や助成金を活用する方法もあります。
設立した法人が社会福祉法人なのか、営利法人なのかによっても受給できる補助金や助成金の種類が異なります。補助金や助成金の種類や手続きに関しては、まずは自治体の窓口に問合せを行うことで情報を得ることが可能です。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権を利用して資金調達を行う仕組みです。ファクタリングサービスを使用することで介護報酬が通常のサイクルよりも早く着金するため、資金繰りが安定します。
売上や国からの介護報酬は、発生から入金まで約2か月ほどのかかる場合がほとんどです。
その間も給与、家賃、水道光熱費、通信費などの支払いは毎月発生するため、運転資金が少ない場合に資金繰りを安定させる目的で活用をする事業者も存在します。
ただし、ファクタリングサービスの利用にはファクタリング会社への手数料が発生するので注意しましょう。
介護施設の建築費をおさえるためには
介護施設の建築時には、多くの費用がかかるため、必要に応じてコストカットを検討していく必要があります。建設費用をおさえるポイントについて解説していきます。
土地の取得費用を押さえる
介護施設は一般的な住宅や賃貸設備を建設する場合と異なり、土地の利便性を多少落としても、施設運営に大きな影響を及ぼさないケースがあるのです。
介護施設は「周りが静かなのか」「駐車場などを確保できる余裕があるか」といった点が優先されるため、駅から離れた閑静な場所が建築候補になることが多いです。
そのため、山間部などを除いた安価な土地を取得できれば、土地の購入費用をおさえることが可能となります。
導入設備に優先順位をつける
施設の利便性を高めようとすれば、際限なく費用を注ぐことができます。
施設利用者の快適性を優先しながらも、ある程度のメリハリをつけて、どのような設備や備品の導入が必要かを見極めましょう。
例えば職員が過ごすエリアのオフィス家具の費用をおさえたり、車両は中古車を選んだりするなど、工夫次第で設備の費用を削減することが可能となります。
介護施設建設を検討中の方は、まずは専門家に相談!
介護施設の建設には、押さえるべきポイントや遵守しなければいけない法令などが数多く存在しています。
初めて介護事業に参入する方は、見落としがちなポイントも少なくありません。
株式会社タカオでは、数多くの介護施設の開業をサポートしてまいりました。ぜひ、介護事業の立上げを検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。